バッテリーY 作:あさのあつこ 角川書店(角川文庫) 2007.4 超個人的評価:★★★★+☆ 終わってしまいました。 じんわりとそんな感傷にひたりたくなる最終刊。 天才バッター、門脇を相手に控えていても「誰にも負けない」そう言い切ってしまう巧を、新田東の元キャプテン、海音寺は心配に思う 野球以外は、球を投げること以外はほとんど興味を示さなかった巧。 新田にきてからの一年ほどの間にずいぶん変わった。 野球というものの楽しさ、人それぞれが抱えるもの、思いの強さ…… そんなものすべてを巻き込んで、最後の試合が始まる。 ああ、もうどこから書こう。 色々思ったことはあるはずなんですが、まだ頭のなかがわーってなってます。 ピッチャーとキャッチャー。 巧と豪。出会ってしまった幸運というべきなのか不幸というべきなのか。 本気で関わりすぎて、傷ついて傷つけて。 それでも相手のことしか考えられない二人の関係にも一つの決着がつきました。 この二人、もうなんか友達とかそんな生ぬるい関係には絶対なれないんだろうな。 物語途中はものすごい愛憎劇が繰り広げられています。 いや、ほんと大げさじゃなく。 「俺だけを見ろ!」みたいな…… バッテリーの良さは、キャラクターの一人一人が間違い無く生きている、ということだと思います。 だから正確には巧と豪のお話、とは言えません。 名門チーム横手の天才バッター、門脇と彼を支える頭脳派、瑞垣の関係とか。 本当に天才で、高校からも引く手数多な優等生(野球に対してはほんとストイック)な門脇。 その彼を支える5番の瑞垣は小さい頃から共に野球をしながら、門脇の野球の才能にコンプレックスを感じていて、野球を辞めようとしている。 それに対して門脇はどこかで瑞垣に依存している部分があったりしてさ。 大きな意味を持つ試合を前にして、この二人の関係も変わろうとしていきます。 ちなみにこの二人に関わっていこうとする、ある種天然な海音寺も要チェックなんですけどね。私的には。 一人一人がきちんと書き込まれているから、誰一人としてどうでもいいキャラクターがいないんですよ。 今回一番印象的だったのは青波でした。 ネタバレになるといけないので多くは語りませんが。 ほんと、強い子だわ。 話をぐぐっと飛ばして文章を語りたいと思います。 なんていうか、バッテリーの文章(あさのさんの作品のわりと多くにいえることですが)ってエロくないですか? いや、エロとか言っちゃうとなんかとってもアレな感じなのですが。 試合シーンはやたらと快感とか快楽とかいう言葉が出てきたりして。 思わず回数を数えてしまいたくなりました。再読したらやるかも。だめだ私。 身体性っていうんですかね。心臓の音とか。手足の動く感じだとか。そんなのもなんか、そういう緊張感があるような気がする。 まちがってもさわやかなだけの野球部の物語ではないんだよなあ。 結末。 これはこれでよかったんでしょう。 ここで終わるか!!ってかんじでしたけどね。 逆にああ、やっぱりって、そうも思いました。 気になる方、とりあえずチェックしてください。 未読の方、いらっしゃいましたは一度一巻を手にとってぱらぱらとめくってみてください。 たぶん、この作品は人によっていろんな読み方ができると思う。 そういう、作品です。
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