シンデレラを嗤え 作:剛しいら イラスト:石田育絵 光風社出版(クリスタル文庫) 2006.11 超個人的評価:★★★+☆☆ この本はBL(ボーイズラブ)です。苦手な方もしくは言葉の意味がわからない方は見ない方が良いかもしれません。 区役所の苦情対応の窓口で働くごく普通の男、灰原。 冴えない日が続いたある日、道ばたの占い師に「何事も思ったことと反対のことをやるとよい」という助言をうける。 その言葉にしたがって、反対に賭けたサッカーくじが大当たりし、灰原はすべてを放り出して新しい自分探しを始める。 それはくたびれた38歳の灰原を少しずつ魅力的に変えていく。 そして、彼はスポーツクラブで運命の相手、夏神と出逢うが…… タイトルは「シンデレラを嗤え」ですが、お話は間違いなく一人の男のシンデレラストーリー、です。 これで主人公が受で、相手が本当に王子様みたいなのが出てきたらがっかりなんですが、そうはならないんだな。 主人公の灰原は区役所の苦情対応窓口で働く38歳。 妻との関係は冷え切っており、仕事では毎日あやまってばかり。 繰り返す毎日の中で、男としての責任は果たしているけれど、そんな生活にむなしさを抱えているオジサンです。 それが、気まぐれで見てもらった占い師の一言を切っ掛けにすべてを変える決意をする。 妻に離婚を申し入れ、家を出て、自分の為だけにお金をつかう生活の中で灰原は少しずつ自分に自信を取り戻していきます。 そんな中で出逢ったのが夏神。 夏神は有名クリスタルガラスの会社の社長です。 親しく付き合ううちに灰原は夏神の会社に再就職。 その一方で夏神との友人づきあいも続けていくのですが、夏神は自分の灰原への思いが友情ではないことを告白。 夏神への気持ちに戸惑いながらも放っておけない灰原ですが…… おっと、またあらすじになってしまった。 くたびれたオジサンをシンデレラにみたてたステキなストーリーとか。 社長と社員という関係性を超えて夏神を助けたいと思うようになる灰原の想いとか。 そのどれにもかならず男としてという葛藤が絡んでくるところとか。 色々と楽しかったです。 途中で出てきたカフカの「変身」のモチーフが気になって仕方がない。 たしか主人公が突然毒虫になってしまう不条理小説、だよね。 そのうちきちんと読んでみようと思います。 うん。最近ラノベっぽいものばかり読んでるからちょと固い話が読みたくなって来ました。 結構深い一冊でした。 文学的な読みとかもやろうと思ったらきっと出来るに違いない。
|