エデン 作:五條瑛 文藝春秋 2006.8 超個人的評価:★★★+☆☆ ストリートギャング〈涅槃〉のリーダー格だった青年、亞宮(あく)。 対立組織〈四頭会〉との抗争の際に逮捕され、二年間の特別矯正施設送りの判決を受ける。 死刑が廃止された今日、囚人は特別矯正施設に入れられ、そこで刑期の終了(終身刑の場合死を)待つのだ。 亞宮が送られた施設はK七号、別名プリウーレと呼ばれる場所。 そこは右翼や左翼過激な宗教家、テロリストなど様々な思想犯ばかりを閉じこめた特殊な施設だった。 何の思想も持たないストリートギャングだった亞宮はなぜここに入れられたのか? 同じくK七号にいれられた元敵、四頭会のツァイと協力(時には対立?)しながら亞宮は己の置かれた状況を見極めようとするが…… どうして亞宮はこんな施設に放り込まれたのか?という謎から少しずつ話が広がって、この特殊な施設での生活やら思想犯たちとの交流、そして過去の事件へと話が繋がっていく過程が自然で安心して読めました。 相変わらずヲトメ心を狙っているんだか、それともワタシの深読みしずぎなのか悩む感じにキャラクターが魅力的です。 様々な思想に振り回される他の受刑者の中で、自分の思った通りに自由に行動する野生児の亞宮はカッコイイです。 それから元敵にもかかわらず、利害の一致によって協力するツァイとの関係も素敵。 軽口をたたき合ったり、そこから険悪なムードになったり、それでも協力したりする二人の関係に「お前ら仲良しすぎだから!!」 ツッコミを入れながら読み進みました。 あとカウンセラーの宇津木との関係とかもなんだか狙われているような気がしてなりません。 これは私の目にかかったフィルターのせいなのかな……(遠い目) 物語の最後にはエピローグがあります。 だけど、私的にはこのエピローグはなくてもいいと思う。 ちょっとできすぎいうか、なんとなくとってつけたような感じを受けてしまいました。 これは裏設定として、どこかに匂わせるぐらいがよかったんじゃないかなんて考えてみたり。 楽園っていうのは、どこにもなくてどこにでもある場所なのかも。 余談ですが、なんとなく前に読んだ赤い羊は肉を喰うと似てるかなーという印象を持ちました。 ▼キーワードは実験 いや、たまたま続けて読んだだけかもしれませんが。
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