YES・YES・YES 作:比留間久夫 河出書房新社(河出文庫) 1992.7 超個人的評価:★★★☆☆ ジュンは一度自分を破壊するためにその街で男相手の男娼になった。 そういう客の集まる『バー・アドレッセンス』でボーイをしながらこの一風変わった日常に適応していく。 そんなジュンの出逢った人々、出来事。 「繊細な話だ」というのが第一印象。 物語自体は繊細とは結構かけ離れたところにある。 主人公の語り口は軽妙で、そんなジュンによって語られる世界はあけすけで美しいものではない。 まちがってもボーイズラブみたいに甘い世界観じゃないし、もっと生々しい。 本の裏表紙のあらすじには「甘く残酷な愛の冒険」なんて言葉が踊っているから、騙されると結構きびしいと思う人もいるかも。 この物語には決定的な結末が存在しない。 自分を壊すためにこの街にきたジュンは中途半端に適応したまま、壊れることも更正することもない。 ただ、同じボーイ仲間や色々な客に出逢って少しずつ変わっていく(それも気づかないうちに)だけだ。 だからかな。最初のような印象を受けるのは。 有名なのは映画監督にチップをもらうエピソードだけど、それは期待しすぎて読んだせいかあんまり残らなかったな。 トキメキを感じるよりは文学的な読みをしてみたくなる作品でした。
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