ぼくらは月夜に鬼と舞う

作:藤沢呼宇
イラスト:目黒詔子
岩崎書店
2003.4
超個人的評価:★☆☆☆☆

第一回ジュニア冒険小説大賞受賞作、だそうですが。
とりあえず個人的にはずーっと「えー?」の連続でございました。

中学受験に向けて塾に通う主人公の完(カン)。
勉強一色の生活に嫌気がさしていたところに、近所の犬猫が殺されるという怪事件が発生した。
最初は傍観していたのだが、その謎を追って友達のモッチが行方不明になってしまう。
完はモッチを探して不思議な場所に迷い込み、そこで恐ろしい怪物、鬼を発見して……

つっこみどころが多すぎてどこから書けばいいのかわかりません。
えーと。
最初に主人公とその友達の仲良し四人組がでてくるんですが……
残りの二人ははっきりいっている必要がなかったように思いました。

勉強はそこそこであんまり反抗したことのない基本的「良い子」の完。
勉強なんかほとんどしなくてもなぜか一番頭がよくて奔放なモッチ。
とっても努力型で勉強をしているのにモッチよりは学力が劣る秀才、太一。
太めで頭はあんまりよくないけど不思議な包容力をもっているタマ。

これだけいろいろできそうな設定がついているにもかかわらず、太一とタマはほとんと出てきません。

物語は主人公視点の一人称で語られるのですが、その人物描写がさりげなく学力至上主義っぽくてムカツクのは後半への伏線なんでしょうか??

こういう一人称の児童文学でよく思うのは主人公の人物像。
状況を説明してお話を進めなくてはいけないのはわかるんだけど、そんな言葉はしらんやろ、とか。そんな子供は嫌だっていう文章がよくでてくるように思います。なんだか子供らしくない子供になってしまう。
読み手が子供を想定されていても、書いているのはあくまで大人。仕方ないのかも知れませんけど……

完の父親と母親が完全に記号のような存在だな、と思いました。
「勉強ばっかり押しつけてきて子供の人生のレールを引く親」っていうのはわかるんですけど、なんだか人間らしい部分が感じられなかった。そういう行動をとる親だって考えている部分はあるはず。しかも行動が唐突すぎです。
突然倒れて入院してしまった息子の塾の成績を聞いたからって、翌日いきなり病院から連れ出して勉強させようとはしないでしょうに。
さらに物語の終わりで塾を辞める宣言をした息子をあっさり認めてしまうのは一体どんな心境の変化なのか。謎です。

完が鬼と戦うのを助ける少女、ヒツキ。
自分のことを「おれ」という彼女は個人的にとっても好きなかんじなのですが、なぜおれと言って男っぽい言葉遣いでしゃべるのかがわかりませんでした。一カ所だけとちゅうで「ぼくたち」って言ってるし……しかも女言葉に戻るし。
謎です。

最大の謎はもっちが海岸に打ち上げられて普通に無事だったことですけどね!!

ストーリー的には一昔前のコバルトみたいな展開だったと思います。
もっと練って練って、人間関係とか受験とかへの葛藤みたいなものをいっぱい書いてくれたらとってもときめくのに。
小学生とかが読んだらおもしろいのかなあ。
あの頃の純真だった心がほしいです。

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