川の深さは 作:福井晴敏 講談社(講談社文庫) 2003.8 超個人的評価:★★★☆☆ 元警察官で現在はやる気のない警備員の桃山。 正義感なんて言葉は忘却の彼方で、ただ怠惰に日常を過ごす彼の警備するビルにある日一組の少年と少女が現れる。 二人は数々の追っ手に追われており、少年は酷い怪我をしていた。 命を賭けて少女を守ろうとする少年と、それに答えようとする少女を見るうち、次第に熱いものを取り戻していく桃山だったが…… まだ数冊しか読んでいませんが、なんとも福井さんらしい作品。 オジサン×少年少女で軍事テイストという福井さん的王道パターンかも。 どうやらこれがデビュー作らしいです。 元刑事で多くのことを諦めて生きてきたオジサンが、ヤクザやら国やらその他諸々に追われている少年と少女をかくまったことをきっかけに事件に巻き込まれていきます。 その中でオジサンは生き甲斐やら無くしていた情熱やらを取り戻していくのですが、一方で日本を舞台にした陰謀は加速し、少年は少女を守るための過酷な闘いの中にその身を投じます。 オジサンと少年の心の交流という点では亡国のイージスと近いところにあるお話な気はする。 ただ、あちらは戦艦の上だったから多少のドンパチで破壊されても大してなにも思わなかったんですが、こちらは結構本気で東京の街を破壊しております。あーあ。 福井作品の大きなテーマとして日本という国の歪みや腐敗や自衛隊やら警察やらを巻き込む各国の陰謀があるんですが、 そのあたりはつい読み飛ばし気味で登場人物を見てしまう自分がいます。 いや、わかるんだわかるんだけど、どちらかといえばそれらに翻弄される一人一人の人々にトキメキを感じるんだ。 桃山さんに借りのあるヤクザの金山との関係も素敵でした。 ねらい撃ち(たぶん違う) 川_各自が心の中にもっている大きな流れが海へと繋がる…… 途中途中にある描写が最後に繋がるところにはちょっと感動しました。 全体的に亡国と似てるなあというのが感想です。 ただし個人的にはあちらの方が好み。結末のせいかもしれませんが。
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