終末のフール 作:伊坂幸太郎 集英社 2006.3 超個人的評価:★★★+☆☆ 巨大な隕石の衝突で世界が滅びるとわかって数年。 この地球に時間は残り3年ほどになった。 混乱に混乱を極めた世界は突然、小休止のように平和になった。 そんな世界に暮らす人たちの「日常」を描いた連作短編集。 不思議な話でした。 地球に隕石が衝突して滅びる。 そう言われると思い浮かぶのがハリウッドとかのパニック映画なのですが、それとはまったく逆のスタンスなのです。 心ない態度で息子を死なせてしまった父親、残された時間の中で子どもを産むべきか悩む若い夫婦、本の海に溺れる少女、隕石の衝突にともなっておこる洪水に備えて櫓をつくる老人などなど。 人々はどこにでもいそうで、ちょっと変わった人たちばかり。 伊坂氏のテンポのいい独特の会話も健在です。 そこに描かれているのは確かに日常。残された時間は3年。そんな中での日常です。 それに妙に納得してしまいまして。 残りり○年ですとか言われたら、そりゃ偉いパニックにはなるだろうけど、その後に来るのはこういう妙な「慣れ」と平和に違いない。人間は結構簡単に適応してしまう生き物ですからね。 劇的な事件はおこりません。 残された時間が3年という特異な状況の中をただ懸命に生きている人達がいるだけです。 絶望と逆説的に描かれた希望が印象的でした。
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