四季無情 作:神崎春子 イラスト:笠井あゆみ 太陽図書(DEEPコレクション) 1995.10 超個人的評価:★★★+☆☆ この本は「耽美小説」です。男同士の恋愛やそれ以上のものが描かれています。苦手な方もしくは言葉の意味がわからない方は見ない方が良いかもしれません。 女優の母を持つ遠野春日。 彼は母親ゆずりの美貌で周りの視線を集めずにはいられない少年だ。 過保護な両親をなんとか説得して、彼は自動車学校に通い始める。 しかし、たちの悪い教官に当たり、あやうく襲われそうになったところを元F1レーサーの美貌の青年、夏緒に助けられる。 人当たりも良く優しい夏緒に次第に惹かれている春日だったが、それは夏緒の表の顔に過ぎなかった…… すげえ。 とりあえず最初の感想がそれです。 ボーイズラブではありません。耽美小説。そっちの呼び方の方がしっくりくる。 最初のうちは春日の生活のそこはかとないブルジョワジーさにツッコミをいれたり、夏緒の元F1レーサー今車校の教官という肩書きに驚いたりする余裕があったのですが、後半のぶっとんだ展開に踊らされました。 まず前半の途中で少女漫画的な恋愛が全面的に否定されます。 好青年の皮を被った夏緒はかなりの悪魔です。 純情だった春日は少しずつ堕とされていきます。 さらには夏緒の愛人で教師の斗志秋が現れたあたりからはもうドロドロです。 三つ巴?と思っている内に春日の母親の元思い人、冬司まであらわれてえらいこっちゃです(どんな説明よそれ) うん。 最終的には恋愛感情を超えた肉体的愛情あたりにいきつきます。 リアリティっていう面で語ると大局的な立ち位置にある本なのですが、一つの世界ができていて思わず一気読みをしてしまいました。 笠井さんのイラストもこの幻想的で倒錯的な雰囲気にあっていて素敵でした。 表紙もいいよね。 ただひとつ、(勝手に)全国ぽっちゃり系代表の里希としては気になることが。 脇キャラでひときわ際だっている春日の大学の友達、桃子。 彼女の見た目の描写がすさまじいのです。 車の助手席を押しつぶしかねない巨体、とか、巨大な体躯とか…… 彼女曰く「これでもダイエットして80キロを切った」そうなのでこの描写はどうだろう。 たしかに70キロもあったら太いがここまで言われるほどじゃないんじゃないかな。 でもまあ、彼女は斗志秋の義理の妹で男同士の恋愛を嫌悪していて春日を止める、という存在なので、この扱いに関する文学的な読みも可能な気はします。 そう、文学です。 うっかり社会学とかセクシャリティとかを絡めて考察してみたくなる一冊でした。 なんで耽美小説は発生しえたのか、とかね。
|