LOOP 作:木原音瀬 イラスト:藤田美貴 オークラ出版(アイス文庫) 2003.11 超個人的評価:★★★★+☆ この本はBL(ボーイズラブ)です。苦手な方もしくは言葉の意味がわからない方は見ない方が良いかもしれません。 大学生の義国の中には幼いころから宮澤という若い男がいた。 彼は昔愛した女への未練を捨てきれずに現世にとどまった、いわば幽霊のような存在。 大して主張するでもなく大人しくしている宮澤と義国はそれなりに上手く共存していたはずだった。 そう、その日義国が大学で知り合った英一が宮澤の思い人の転生であることを知った時までは…… 宮澤は義国の体をのっとり、執拗に英一につきまとうようになるのだが…… やっぱり木原さんはすごいな。 木原さんの作品のキャラクターは愛とか恋のために容易に常軌と狂気の境界を飛び越えてしまう。 普通共感したり感情移入したりしながら読む恋愛モノにおいて、そのパワーに圧倒されて時には恐怖さえも感じてしまうほど。 この作品タイトル通りいろんなものがループしています。 たぶん以下話の核心に触れまくりそうな気がするので反転にしておきます。 ▼ 自分の中に前世の人格「宮澤」を抱えて生きる大学生の義国。 彼はある日大学のコンパで出逢った青年がかつての宮澤の思い人の転生であることに気づきます。 宮澤の思いに負け、義国は一ヶ月限定で宮澤に体を貸すことを約束するのですが…… その間に宮澤は英一を徹底的にストーキングしたあげくに手に入れます。 このあたりはもう本当にオソロシイ。 消耗しきった英一は宮澤に体を許すことを承諾、体だけのつきあいだった二人ですが、本気で愛しているとささやき続ける 宮澤に英一は次第に惹かれ始めます。 (このへんの展開はBLファンタジーですが、狂気とすれすれの純愛が切ない) そして、英一に許されたことを感じた宮澤は義国の中から消滅します。 残されたのは宮澤のことを愛し始めた英一と、すべてにおいて置いてきぼりな義国。 ノーマルな義国は英一のことを手ひどく拒絶します。今度はその義国を英一が追いかける展開。 なんだかんだあってこの二人の心も通じ合って、めでたしめでたしかと思うとそうはならないんだな。 今度は前世の記憶を取り戻しかけた英一が、自分が宮澤から受けた仕打ちを思い出して義国を避けるようになります。 突然の変化に戸惑う義国はひたすら英一を追いかけます。 三度はじまるストーキング。 二人の関係性だけではなく、過去の因縁まで引きずっての不幸の無限ループ。 もう本当にひやひやしながら一気に読みました。 迫り来る急展開の連続に息つく暇がなかったよ。 とりあえず全体を通して非常におもしろかったとだけ言っておきます。 この作品、表題作の他に「eternal」「F」という番外編の短編が入ってます。 前回の「HOME」の書き下ろしの記憶と「eternal」というタイトルの響きからひょっとして、義国と英一になんか起こるんじゃないかとびくびくしながら読みました。死にオチとか待ってるんじゃないかって正直ほんと怖かった。 でもそんなことはぜんぜんなかくて、本当によかった。 「F」が好きです。 英一のおじさん(入院中で死期が迫っている)和久の若い頃の話で、彼と同じクラスの不器用な少年との心のふれあい。 その時和久には付き合っている女性がいて、二人の間に恋が成立するわけではありません。 この作をボーイズラブに分類していいのかどうか、正直私にはわからない。 どちらかというと文学に分類して軽く分析してみたくなる。 そういう読みも成立する深い作品な気がする。 二人の今後に待っているのはハッピーエンドではなくて、ただの別離でしかない…… けどそれがまた切なくてさ。 悲しいけど、大好きなんです。
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