風に舞いあがるビニールシート 作:森絵都 文藝春秋 2006.5 超個人的評価:★★★★-☆ ハードカバーの短編集です。 収録作品は 「器を探して」 クリスマス直前、身勝手な社長や恋人に振り回されつつも自分の信じる仕事に紛争する女性の話。 「犬の散歩」 捨て犬ボランティアのためにしなびたスナックでホステスをする恵利子。もらい手のない犬と家族と。 「守護神」 夜間学校に伝わる伝説のレポート代筆屋ニシナミユキをめぐる冒険。 「鐘の音」 かつて仏に心をささげたと信じた男と人生を変えた一体の仏像の物語。 「ジェネレーションX」 最初は簡単なあやまり仕事のはずだった。得意先の若手社員とともに目的地に向かううちに、物語はまったく違った方向へと転がっていくのだが…… 「風に舞いあがるビニールシート」 国連職員の里佳は職場結婚の夫を戦場でなくした。たった7年。それも共にすごした時間はほとんどない夫との記憶をたどるうちに、里佳は一つの決意をする。 森さんはどうしても児童文学や青春小説〜みたいなイメージがあったのですが、この本でいい感じにイメージが変わったかも。 話の方向性的にもバラエティに富んでいるし、そのなかに流れるユーモア(ってもう死語ですか?)の感覚やら優しさが心地よかったです。いろんな世界を書ける人だなーとあらためて思いましたね。 個人的に大好きなのは「守護神」かな。 職をもちながらも勉強にはげむ人々をおもしろおかしく、それでもやさしい目で描いた作品です。(もはやよくわからない説明だ……) 二重三重にひねったストーリー展開が素敵でした。 「風に舞いあがるビニールシート」 思い話です。重くて切ない。 語り出すと完全ネタバレな感じになりそうなのでなにも言わないことにします。 タイトルの、なにかの象徴として描かれているビニールシートがとっても印象的でした。 ただのエンターテイメントじゃなくて、ちゃんと文学です。 文学っておもしろいんだぜ!!ってあらためて主張したくなる一冊。オススメです
|