夜のピクニック 作:恩田陸 新潮社(新潮社文庫) 2006.9 超個人的評価:★★★★+☆ 「歩行祭」 それは北高伝統の、全校生徒が夜を徹して80キロを歩き通すという過酷なイベント。 どう考えても楽しいはずのないこの行事も、三年生にとっては最期の機会だった。 生徒たちはそれぞれの思い出、気持ちを胸にこの長い道のりに望む。 そんな中、貴子はこの歩行祭の中で自分自身と一つの賭けをしていた…… 三年間誰にも言えなかった秘密を自ら精算するために。 久しぶりにおもしろい小説を読んだなという印象でした。 恩田さんは群像劇を描くのが本当に上手い。 たくさんの人がそれぞれの思惑を持って生きている。 それが一つの物語に収束していく様は読んでいて気持ちいいです。 物語の主人公は貴子なんだけど、その周りのキャラクターもすごく魅力的なんだな。 個人的には忍くんが好きでした。 いいよね、こういうポジションは主役級なのになんだか妙に不憫な子。 物語の中には時間が流れます。 それはどんな話でも当たり前のことなんだけど、それをこれほどまでに感じたお話は初めてです。 「歩行祭」という区切られた時間の中で、今はあっというまに思い出すことのできる過去になってゆく。 それがなんとも切なくて、心地よいのです。 まだ読んだことない方は読んでみても損はない本だと思います。
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