さみしさの周波数 作:乙一 イラスト:羽住都 角川書店(角川スニーカー文庫) 2003.1 超個人的評価:★★★+☆☆ 収録作品は 「未来予報 あした、晴れればいい」 友人に「お前ら、結婚するぜ」という不思議な予言をされた僕と清水。 なんとなく気まずくて距離を保ったまま成長した二人だが…… 「手を握る泥棒の物語」 自分のおこした事業を続けるために、金持ちのおばから金を盗むことに決めた主人公。 旅館の隣の部屋から壁に穴をあけた彼が掴んだものは。 「フィルムの中の少女」 映画研究会の私が見つけた古い一本のフィルム。その中に映っていた、少しずつ振り返る少女。 彼女はどうやら以前そこで殺された女子高生のようだが…… 「失はれた物語」 交通事故に遭い、思考と右腕の感覚以外を失った主人公。 音楽教師をしていた妻と彼は指文字と僅かな指の動きだけで言葉を交わす。 の四本。 切ない系三本とホラー系一本という構成です。 一時期自分のなかでものすごい乙一ブームが来た時がありました。 その時はほとんど図書館だったんだけど、スニーカー文庫の方は全巻そろえていたつもりでした。 が、あらためて確認するとこれだけなくて、慌てて購入。 好きなのは「手を握る泥棒の物語」と「失はれた物語」かな。 乙一作品の登場人物がみんながちょっとさみしい人なんだけどなんともいえず優しいのに惹かれてしまう。 ほとんどの物語の結末はハッピーエンドじゃなくて、ちょっと余韻の残るバッドエンドばっかりで、ハッピーエンド好きの私にしてはめずらしいと思うのだけど。 「未来予報」は切ないを通りこして悲しい話だ。 詳細は語らないけれど、僕と清水は基本的にすれ違ったまま。 最後に僕が清水のことを想うことで、多少救いの方向に視線がむくような気はするんだけど。 でもあんまり救われていないよね。 哀しい。
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