妖精のキャラバン 作:ビアトリクス・ポター 訳:久野暁子 福音館書店(世界傑作童話シリーズ) 2000.6 超個人的評価:★★★+☆☆ ピーターラビットのおはなしの作者で有名なビアトリクス・ポターさんの本。 ワタクシ、どうやら妖精というタイトルに弱いようです。 しかしこの本にでてくるのは羽が生えたり小人だったりする妖精ではなく、知性をもった動物たちのこと。 彼らはおまもりにシダの胞子を持っていて、それがあるかぎり人間からは見えません。 そして人間たちの住む世界で、ひっそり時に楽しく働いたり歌ったりサーカスをみたりして過ごしているのです。 一応の主人公はてんじくねずみのタッペニー。しもやけと歯痛に悩んでいたタッペニーは仲間のてんじくねずみたちに騙されて、妖しげな毛生え薬を体に塗られてしまいます。薬はしっかり効いて、タッペニーの短い毛はどんどんどんどん伸び始めます。仲間たちのヤジや奥さんの手ひどい対応に耐えられなくなったタッペニーは住み慣れた街から逃げ出すことにしました。 そして彼がたどりついたのは不思議な妖精のサーカス『アレクサンダー・ウィリアム・サーカス』。 馬のビリーと犬のサンディーが率いるサーカスに仲間として迎えられたタッペニーは、彼らとともに興業の旅にでます。 ただしく児童文学ってかんじがよいです。 なんか小学校のころを思い出して懐かしい気分になりました。 ただ最初のころのタッペニーは虐げられすぎでちょっとかわいそうでした。 物語の大半はタッペニーが聞いた他の動物たちのお話で構成されています。 最後の方はほとんど脇キャラ状態のタッペニー。なんだかこれだけ最初にバックグラウンドが書き込まれてるのに放置されてしまった印象です。奥さんとか仲間たちとか、むしろ薬を売りつけてきたラットンさんとスクラッチさんはどうなったのか非常に気になります。 お話の主題はたぶんタッペニー云々よりも最終章のオークの木の精の話なんだろうな。 大きなオークの木が人間に切られてしまって、その木に宿っていた精霊のお話。 精霊は人間を憎んで、いろいろ復讐をするんだけど、最後は自分が住んでいた木でできた橋に住んで人間を助けてくれるようになるというお話。 まとめてしまうとなんだかなあなカンジですね。 人間に都合のいい話っていってしまえばそれまでなんですが……結局人間は自然を壊しながらそれでもできるだけ自然と共存して生きていくしかないんだよって、そう言われているような気がしました。 自然を大切に。下手したらただの偽善になってしまうけれど。 でも私たちは自然がないと生きていけないし、その自然をまったく壊さずに生きることもまた不可能なわけで。 なんだか上手く言えませんが。 いろいろ考えさせてくれる良い本でした。
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