神様がくれた指 作:佐藤多佳子 新潮社(新潮文庫) 2004.9 超個人的評価:★★★★-☆ プロのスリの辻牧夫、通称マッキーは刑務所から出所したばかり。 迎えに着た早田のお母ちゃんと家に帰る途中、奇妙な子どもたちによるスリにあう。 慌てて追いかけるも、商売道具でもある利き手にケガをおってしまった。 このままでは家に帰れない…… そんなマッキーを助けたの一人の青年だった。夜は女占い師マルチェラとして街頭に立つ、昼間薫はギャンブルに負けて家賃を使い込んでしまったところだった。助けてくれたお礼にと家賃を肩代わりしたマッキーに、昼間は居候することをもちかけ、スリと占い師の奇妙な同居生活がはじまった。 このお互いツイていない青年たちの出会いによって、一つの運命が回り出す。 スリと占い師。 この組み合わせのミスマッチが楽しかったです。 ある意味犯罪者なのに、どこか人を引きつけずにはいられない純朴な?魅力をもったマッキー。 それに対しギャンブル好きの昼間は一見いい人をよそおっているけれども、ちょっとした葛藤も抱えている。 この全然関係ない二人が同居しているシーンが好きです。 それぞれ稼ぎ時の時間が違うのでほとんど顔を合わせることはないんですが、それでも二人分の食事をつくってくれるマッキーとか。家に帰ってきたときに人がいることにほっとして、ちょっと嬉しくなってしまう昼間とか。 なんだお前ら!!ちょっとかわいいぞ。 物語の主軸は、マッキーにケガをさせたスリグループの子どもたちを追いかけていくことでしょうか。 後半の展開はなかなかスリリングでした。 けど、最後の方でちょっとえーってなってしまった。 以下ネタバレありです。反転で。 最後にハルを逃がしてしまったのがちょっとどうしてもひっかかっております。 確かにハルはとても魅力的な少年です。こういう黒い子は好き。 でも彼はちょっとやりすぎている。 親父さんを線路におとしたり、女の子からお金をたかったり。 色々と結局は彼のせいなわけですし。 それを本物のスリだからという理由で自由にしていいんでしょうか? まあ、どちらにしてもスリ自体間違いなく犯罪です。 でも読んでるとかっこよく見えちゃうんですよね。 まあ、あくまで彼らは『プロ』だからなのかもしれないけど。 最後の最後でちゃんと運命に立ち向かうことを選んだ昼間に拍手。 さわやかな読後感でした。
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