ナイフ 作:重松清 新潮社(新潮社文庫) 2000.7 超個人的評価:★★★☆☆ 実は重松氏の本を読むのは初めてだったりします。 たまたま講演会を聞けることになったので、予習がてらよんで行きました。 イジメと家庭がテーマだと思われる一冊。 収録は 「ワニとハブとひょうたん池で」 ある日いきなりクラスメイトたちからハブ(=村八分)宣言をされてしまった少女と、裏の池に住み着いたらしいワニとの奇妙な共感を描いたお話。 イジメの描写とか両親との確執が痛かった。主人公は強い子である。ハッピーエンドかどうかはわからない。でも現実はこんなもんなのかもしれない。 「ナイフ」 主人公は中年の男性。少しずつ引きこもりになっていく息子と息子を心配する妻。 なにもしてやれない弱い自分にひどい無力さを感じる日々の中、彼は昔の同級生をテレビ画面の中に見つける。 それは海外に派遣された自衛隊のニュースだった。ほとんど会話をかわしたこともないかつての同級生に今なお強いあこがれを感じる主人公だったが…… 現実は少しずつ悪い方へと進んでいく。そして、彼はナイフを買った。 以下いじめられっ子の幼なじみとその強烈な父親をみまもる女の子の「キャッチボール日和」。 いじめっこの転校生のエビスくんと主人公の少年。いじめ?と友情を描く「エビスくん」 娘の担任の先生と妻のバトル。結婚退職と家族をめぐる「ビタースウィート・ホーム」 テーマからそうなのかもしれないけど、全体的に重い話でした。 決して救いがないわけじゃないんだけど、完全なハッピーエンドとかはない感じです。 重松氏の話は、よくも悪くも現実的なのかも。 その分どっしりして読み応えはあるし、読んで考えさせられることはたくさんあります。 でも精神が楽しい虚構の世界を求めているときにはツライかも。 妙なトラウマスイッチが入って凹みそうになりました。 ただ、まちがいなく上手い人だと思います。
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