水銀虫 作:朱川湊人 集英社 2006.9 超個人的評価:★★★+☆☆ 人を死へと導く水銀虫をめぐるホラー短編集。 収録作品は 「枯れ葉の日」 妻を殺してしまった男が出会った不思議な雰囲気を持った女。彼らにつきまとう罪と罰。 「しぐれの日」 幼き日に出会った一見幸せそうな若夫婦。彼らが抱える罪の正体は。 「はだれの日」 人を死へと駆り立てる女と少しずつ壊れていく家族と。 「虎落の日」 孫を亡くした友人の元へ自分の孫を連れて見舞いに行くことになった富士子。そこで彼女を待ち受けていたのは。 「薄氷の日」 幸せになろうとしている奈央の元にあらわれた過去の悪夢。クリスマスに彼女を襲った一つの選択の行方。 「微熱の日」 体調が悪いなか山の秘密基地に遊びに行った信也。そこで彼はみたこともない不可思議な生き物をみつける。 「病猫の日」 鬱病になってしまった妻を抱えて生きる八重樫。彼の前にあらわれた不気味な黒い男。愛が終わる日の結末。 ぎゃーっていう怖さはないけど、じんわりと怖いところが魅力の短編集です。 作品によっては怖さよりも若干の後味の悪さを伴う場合もあります。 私は好きなんですけどね。なんとなくアニメの(ここ重要)地獄少女に通じるものがある気がしないでもないです(まったく中途半端な感想です) ホラー短編集としては良作ですが、全体を通じた「水銀虫」というテーマがちょっと弱いかな?と思いました。 人を凶行に駆り立てる象徴的な存在として描かれているのですが…… なんだろう。若干とってつけたように見えてしまいまして。 雰囲気だけで結構まとまっているので、別に水銀虫いなくても成立しそうな気がします。 以下ネタバレ的つぶやき。ところどころ反転でお願いします(▼の部分です) 私的に一番怖かったのは「虎落の日」です。 ▼カニバリズム的な発想も怖かったのですが、何よりもおばあちゃんの愛が怖すぎるよ。 ホラーを読んでいるといつも思うのは結局一番怖いのは人間なんだよね、ということです。 未知の化け物も暗闇に潜んでいるものも怖いけれど、それを生み出す人間が一番怖い。 「薄氷の日」だけちょっと雰囲気が違うかも? ▼過去の罪の償いをさせるっていう発想はいいんだけど、安易に神さまが出てくるのはちょっとどうだろう。 もうちょっとひねったオチを期待していました。 そんな道徳の教科書じゃないんだから……なんて思わなくもないです。
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