ポプラの秋 作:湯本香樹美 新潮社(新潮文庫) 1997.7 超個人的評価:★★★★-☆ 父親が死んで、虚ろになってしまた母とともに千秋は家を出た。 目的地のない小旅行の末、二人がたどり着いたのは一軒の古いアパート。 大きなポプラの木が目印のこの場所で、七歳の千秋と母の生活が始まった。 不気味で近寄り難い大家のおばあさん(じつはいい人)や、 少々変わっているけれど温かい住人たちとの日々が幼い千秋の中に残したものは…… 湯本さんの本を読むのは二冊目です。 以前に読んだのは代表作の夏の庭でした。 高校の時、部活の放送部の朗読大会に出るため読んだのが最初。 一見偏屈そうだけど温かいお年寄りとのふれあいという点では共通のテーマかも。 だけど、「夏の庭」よりもこちらの方が若干大人向けかなあという印象です。 千秋や彼女の母親が抱える複雑な環境だったり(これは他の登場人物にも言えることですが) 七歳で彼らと出会って「成長」してはいるんだけれど、大人になっても本質的には変わらない千秋の 繊細でもろい部分だったり…… きっとそれは今読んだからじわっとくる部分だと思う。 高校生の私が読んでいたら、また違うことを感じるのかもしれない。たぶん、もっと単純に。 「天国に手紙を届けてくれるおばあさん」というある意味ファンタジーな要素と、それをとりまく現実的な 部分のバランスがとっても心地よかったです。 見たものを素直に(子どもの目で見たかのように)描写するような文章が好きだなあ。 なんだか全然関係ない部分で泣きそうになってしまいました。 ノスタルジー溢れる良作です。
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